その辺で拾ってきた石をオークションで売ってもいいの?無主物と所有権とその他法律
流木やシーグラスはオークションにかけると結構な値段になるらしい。って言ってもね、近くに海はないし採れるものは石ぐらいだ。…そうだ、石でも売るか。とはいえ、お国の山でキノコ採ってくるのも本当はいけないって聞いたことがあるし、白昼堂々と拾ってきた石を売るのってマズイんじゃないの?その辺のところを調べてみました。
その辺(国の土地)での採取、法律的にはどうなの?
道端で綺麗な石を拾ってきた、とか、無意味に草引きちぎってくる、とか誰しも経験あるのではないでしょうか。また、山に昆虫採集に行ったり、川で魚釣りしたり。何気なくやっているけど、自分の土地でない場所で何かを拾ったり採取する行為…よくよく考えてみると法律的にはアウトだったりするんじゃなかろうか?私用の範囲ならともかく、オークションとはいえ商売。ちゃんと把握しておかねば問題ですからね。
結論:確認取った方が確実
採取した物の所有権が取得できれば、食うのも売るのも自由。ではありますが、そう簡単にはいきません。まず所有権まわりが怪しいものもあるし、他にも関わってくる法律や条例は盛りだくさん。こっちの法律では大丈夫でも、別の法律が関わっていてそちらではアウト、みたいなことが結構起こり得る。場所と場合と善意によって随分変わってくるし、厳密にいえばダメだけど常識の範囲内で許されている場合が多いということは、念頭に置いたほうが良いですね。販売目的だと大抵よろしくないので、本気なら確認とか許可を取った方が確実。早々石売りは断念しましたが、以下、調べた中で分かったことを記しておきます。
※あくまで常識の範囲を超えたところの話
石集めをエンジョイしている子供に「それ国のものだから犯罪だぞ」って言うのは穏やかじゃないですね。その辺で石拾ってきて捕まる、ということが現実的に考えにくいように、常識の範囲内では問題にならない事柄なので、日常生活を堅苦しく送る必要はありません。
その辺の石の所有権について
国有地で石を拾うことを想定します。ここにおいて、その石が無主物かどうかがポイント。無主物というのは所有者のいない物のことですが、無主物でなければそれは土地所有者の物、つまりここでは国の物ということになります。国とはいえ他人の物なので、拾ってきたら窃盗となる訳ですね。訴えられるかはともかく。
無主物であれば所有権が取得できる
1.所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。
無主物=所有者のいない動産、であれば所有権が取得できることを無主物先占と言います。で、無主物って何かというと、土地に依存しない野生の動物や昆虫などのことらしい。つまり、魚釣ったりカブトムシ採ったりする行為は、正式に(所有権的には)大丈夫ですね。逆に土地に定着する植物などは、その土地を構成する一部と見なされるので、厳密に言えば、引っこ抜いてくると窃盗ということになる。木から落ちた枝とか果実とかは無主物。そして、石は…石は微妙なんだよな。転がってきました!って感じの石ころなら無主物といってもよさそうだけど、明らかに岩面したヤツはダメだろう。
無主物でも採取してはいけない例
とりあえず石は置いておいて、無主物についての補足。
特別保護地区内においては、次の各号に掲げる行為は、国立公園にあつては環境大臣の、国定公園にあつては都道府県知事の許可を受けなければ、してはならない。
七 木竹以外の植物を採取し、若しくは損傷し、又は落葉若しくは落枝を採取すること。
九 動物を捕獲し、若しくは殺傷し、又は動物の卵を採取し、若しくは損傷すること。
国立公園は特別地域と普通地域に分けられますが、特別地域の中でも特に行為が規制されているのが特別保護地区。ここでは、動物の捕獲から、落ち葉を含む植物の採取まで全面的に禁止されています。採取はもとより、むやみに物を動かすのも避けた方が無難。対して、国立公園の中で普通地域に区分される地域では、意外なことに動植物の採取は通常禁止されていません。もちろん、禁止されていないからといって絶対的に良いという訳でもない。
希少野生動植物種の指定を受けた種は捕獲・採取や譲渡し(販売や譲渡など)が原則禁止され、それらを実施する場合には環境大臣の許可が必要となる。
希少野生動植物に指定される特定の動植物は、採取・販売が原則禁止。まあ、このあたりになると、その辺の物拾ってきた、というレベルじゃなくなりますね。
所有権以外の法律が関わってくる例
たとえば、禁猟区の鳥獣を捕獲する行為は狩猟法違反とはなっても、刑法上の窃盗罪は成立しない。
所有権以外の法律が関わってくる分かりやすい例。鳥獣は無主物だから、捕獲すれば所有権が取得できるので窃盗にはならないけど、禁猟区では鳥獣を捕獲すること自体が狩猟法違反になる。また、魚も要注意。自由に泳いでいるように見える魚でも、漁業権がある場所で対象の魚を採取をすると、漁業権侵害罪になります。私用だから~で済まされないので、どんなケースでも注意が必要。
森林窃盗罪(しんりんせっとうざい)とは、森林においてその産物(人工を加えたものを含む。)を窃取することを内容とする犯罪である。
森林法はその土地の所有者を問わず、そこが森林とみなれれば適応される法律。主に木の保護が目的っぽいですが、「森林の産物」というアバウトな枠で、無主物を含む森林のあらゆるものが森林窃盗罪の対象とされています。カブトムシ一匹捕まえるくらいでは問題になりませんが、販売目的や大量の採取となると意識しなくてはならない法律ですね。
流れ着いたの石の採取について
土地に定着している石はダメそうだと分かりましたが、河原とか、海岸の石は流れてきたものだから無主物じゃない?そうに違いない。そういう前提で話を進めます。
河原や海岸の石の採取
河川区域内の土地において土石(砂を含む。以下同じ。)を採取しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。
第八条 海岸保全区域内において、次に掲げる行為をしようとする者は、主務省令で定めるところにより、海岸管理者の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める行為については、この限りでない。
一 土石(砂を含む。以下同じ。)を採取すること。
e-Gov法令検索(海岸法)
…そう、河原や海岸では無許可で石を採取することができません。といっても、河川法や海岸法は治水が目的の法律。何故土石の採取を制限しているのかというと、ショベルカーでガリガリするような大規模な地形変形を禁止して災害を防止する為ですね。なので、販売目的か否かに関わらず、個人が手に入れられる量の石では問題ないと思いますが、一応関係してきます。
流木やシーグラスは漂流物
石の扱いは難しいところがありますが、流木やシーグラスについては比較的明瞭です。あれらは漂流物や漂着物と言われる、端的に言えば「ゴミ」。所有者がいないので、堂々と拾ってきて良い訳ですね。ただ、あからさまにゴミと判断できるものは問題ありませんが、原則的に漂流物は水難救護法により届け出が義務付けられています。
第二十四条 漂流物又ハ沈没品ヲ拾得シタル者ハ遅滞ナク之ヲ市町村長ニ引渡スヘシ但シ其ノ物件ノ所有者分明ナル場合ニ於テハ拾得ノ日ヨリ七日以内ニ限リ直ニ其ノ所有者ニ引渡スコトヲ得
e-Gov法令検索(水難救護法)
遺失物なら警察ですが、漂流物だと市町村長に届け出ることになる。沈没船のお宝拾ったときなんかは、これに従う必要がありますね。
海岸での採取が禁止されている例
3.サンゴの死骸(骨格)も採捕禁止です。
違法に採捕したサンゴの所持、販売は禁止されています。
沖縄県はサンゴの採取を禁止しています。自生しているのはもちろん、海岸に落ちてるやつもダメ。原形をとどめていないサンゴのかけらの利用については、各管理者に問い合わせとのことです。問い合わせが必要なのは、サンゴのかけらが土石と判断され、海岸法に関わってくるからだと思われる。
まとめ
間違ってるかもしれないので、鵜呑みにしないでね。専門家の意見求む。
思った以上に石の扱いって複雑でした。そもそも、金になりそうだから拾ってこようという魂胆がよろしくないのかもしれないな。何でもかんでもお金に換算してしまいがちだけど、法律が守っているのはそればっかりじゃないし、良識を持って生きていきたいと思います。